大家さん戦国時代へ
空室拡大が止まらない
賃貸住宅を経営している大家さんのご相談で一番多いのは何と言っても空室対策です。
日本の賃貸住宅は年々空き部屋が増大し、2013年のデータでは、全国平均で18.9%が空室になっています。街を歩けばいたるところに「入居者募集」の看板を目にし、廃墟と貸したアパートやビルまで見かけます。いったい、今後の賃貸住宅市場はどうなってしまうのでしょうか。
具体的な空室対策を知りたい方は空室対策にお進みください。
人口と世帯数の推移
日本人の人口は2015年まで6年連続で減少しています。既に人口減少の時代に突入し、逆に出生数は過去最小を更新してしまいました。
この先の見通しでは、2050年までに1億人を下回り、全国6割以上の地域が2010年の人口の半分以下になると推計されています。東京も例外ではなく、2021年からついに人口が減るだろうと言われています。平均寿命が毎年延びると予測して計算されていますが、出生率が延びない限り、この流れは止まりません。
日本総人口の推移・推計
他方、世帯数に目を向けると、高齢化や未婚率の増加に伴い核家族化が進行。1人、2人世帯が増え、ここ数年は人口減少しつつも世帯数は逆に増加傾向にありました。しかし世帯数の伸びも2015年がピークと推計され、ついに世帯数までもが減少時代に入るのです。
それでも賃貸住宅は建ち続ける
人口が減り、世帯数までも今後は減少していくのに、何故か賃貸住宅の着工戸数は安定し、数年前より増えているのです。「住む人が減っているんだから、もう新築は建てないでよ」とベテラン大家さんの叫びが聞こえてきます。
賃貸住宅の新設着工戸数 首都圏版
賃貸住宅の建築がここ数年持ち直したのは、2015年の相続税改正が大きな理由です。相続税の適用範囲が広くなったことにより、それほど資産がない人でも課税対象になってしまいます。大手のハウスメーカーはこれ幸いと「相続税対策に賃貸住宅を建てましょう。老後の不安も解決です」の営業攻勢をかけた結果が表れています。
大手ハウスメーカーの最近の業績を見ると、戸建ての売上は年々減少してるのに、賃貸住宅の建築がそれを上回る利益を計上していました。
それ以外にも、跡継ぎ不足で農家が減少し、空いた土地に賃貸住宅がたくさん建ちました。年金不安から投資用の分譲マンションを賃貸に出すケースも増えています。
駅から遠く周りに何もない場所でさえも、いつの間にか次々とアパートが建築されています。新築から出ているであろう入居者募集ののぼりが風になびいているのを見ると、やはり一括借上で長期保証を行う大手ハウスメーカーが大半でした。大家さんの将来を考えると本当に憂鬱な気分になります。
家賃の値上がりは期待薄
賃貸住宅市場は供給過剰で需要も減少傾向にあり、今後もより一層厳しい状況が続きます。実際、入居者募集のインターネットの登録件数は年々増えており、空室増加が伺えます。そのような状況ですから、家賃の相場も全体的に値下がり傾向にあります。
ファミリータイプの賃料指数の推移
10年以内に空室率30%の時代が来る?
賃貸経営は建てたら終わりではなく、30年後、50年後を見据えて経営しなけばなりません。不動産投資をしたときのローン返済は20年、30年と続きます。10年後に空室率が50%もあったら返済に窮し、建物の大規模修繕やメンテナンス維持費を考えると、運営を続けることはどうやっても困難になります。
私はあと10年以内に空室率30%の時代か来るのではないかと考えてしまいます。残念ながら、この流れは避けられようがありません。