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賃貸経営の道標

サブリースの仕組み

最近、大手不動産会社を中心にサブリース契約が増えてきました。サブリースとは物件の一括借上のことで、不動産会社が一旦全戸借りて、それぞれのお部屋を実際に住む人に貸し出す(転貸する)ことです。

不動産会社が一旦借りてくれるので、実際には空室でも大家さんには毎月家賃が入ります。また、不動産会社にとっては実際に住む人と貸主の立場で契約できますので、家賃や礼金などを自由に設定して貸し出すことができます。不動産会社にとってはリクスがある反面、高収益を上げることができるのです。

サブリースは企業が儲かる

以前働いていた会社でもサブリース、いわゆる一括借上(家賃保証制度)を扱っていました。
大家さんとの契約は他に一般管理や滞納保証などもありましたので、サブリースの占める割合は全管理戸数の2割程度でした。しかしサブリースの売上(利益)は全体の6割以上になっていたのです。実際にサブリースは儲かるのです。

空室の家賃を保証しなければならないのに「何でそんなに儲かるの?」と疑問を持たれると思います。運営方法が素晴らしかったかというとごく普通で、他の一般管理とやることは変わりません。逆に言うと、大家さんが本来であれば得るべき利益を不動産会社が吸い上げている構造になっているのです。

リスクがあるのだから儲かるのは当然、という思いこみは誤りなのです。なぜなら、サブリースというのはリスクを極力抑えた契約になっているからです。

契約期間中でも家賃保証の減額ができる

多くの大家さんが家賃保証のシステムを誤解している点で一番多いのは、設定した家賃が保証期間中ずっと保証されているわけではないということです。ほとんどの契約書には家賃の改定条項が入っていて「2年毎に賃料改定を行う」または「契約期間中であっても賃料改定ができる」となっています。

また、賃料改定の条項がない場合でも、借地借家法では「当事者は将来に向かって家賃の増減を請求することができる」と定められていますので、不動産会社はいつでも家賃改定を大家さんに申し出ることができるのです。

そういう理由から、サブリースの物件は部屋が決まらなければすぐに条件を下げます。空室が何よりも損失になりますので無理はしません。そして家賃保証の額というのは実際に成約した賃料の85%~90%程度に設定しますので、家賃が目減りすれば大家さんにサブリース金額の減額を申し出ることになるのです。結果、不動産会社はサブリース中は必ず儲かるようにできているのです。

そして大家さんがサブリース金額の減額を拒絶したら、それを理由にサブリースの解約を迫られるか、裁判となって近隣相場と比較した家賃になってしまうのです。もちろん大家さん側から増額の話も出来ますが、相手は不動産のプロですので、近隣相場の資料を都合のいいように集めてある程度操作ができてしまうのです。

家賃の免責期間が設けられている

通常、サブリース契約直後は入居者の募集期間であることを理由に家賃の1~3ヶ月間を免責する契約になっています。そもそも家賃保証はリスクが高いことを理由に、ほとんどの場合は新築でないと扱われません。新築から2,3ヶ月も入居者が決まらないなんてことは、家賃設定を間違わなければほとんどあり得ません。そのため、免責期間の家賃は不動産会社のまるまる利益になるのです。

また、最近増えているのは空室になった部屋の家賃を1ヶ月間免責にするというものです。その理由は清掃等のリフォーム期間であったり募集期間というのが大半です。これも新築から数年間は特異な入居者でなければリフォームに1ヶ月もかかることは非常に稀です。清掃だけなら1日で終わりますし、1ヶ月以上かかるリフォームというのは部屋内を一度スケルトンにするなどの大規模工事の場合だけでしょう。こうして解約が出るたびに不動産会社の利益が蓄積されていくのです。

30年一括借上はいつでも解約ができる

一番の問題は家賃保証をしている不動産会社からの解約が認められることにあります。大家さんが家賃減額を拒否したり、多少の家賃減額ではもう収益が合わないと判断すれば、不動産会社は契約を解約することができるのです。
30年間の長期保証、最近では49年間保証します、という商品も出てきました。しかし現実は契約期間中でも解約することができ、解約に理由は要りません。サブリース契約は通常の賃貸借契約と同様に扱われますので、不動産会社は借主の立場から解約予告を満たせばいつでも解約が可能なのです。

大家さんからは解約ができない

サブリース契約の場合、大家さんは貸主の立場になるため、解約するには相当な事由が必要です。実際には建物の老朽化など住むことが困難になった場合、もしくは相当の立退料(半年分など)でしか認められません。一度契約してしまうとその物件の収益をほとんど搾り取られることにもなりかねません。

大家さんから解約するタイミングは、ほとんどの場合は減額交渉された時だと思いますので、不動産会社も解約に応じると思います。しかし過去には、不動産会社が大家さんからの解約を拒絶して、なおかつサブリース金額の減額請求を裁判所に申し立てた会社があります。

施工会社によるサブリースはコスト高

施工会社とサブリース会社が同じ場合、収益を上げることはほとんど難しくなります。また、施工会社が大手企業(東証1部上場など)の場合は建築費自体が高額であるケースが多く、そうなるといつかローンの支払いが厳しくなるはずです。

その理由は、家賃保証をする条件として、物件の施工から入替工事、大規模修繕なども家賃保証会社が行います。また、日常清掃や定期清掃などの建物メンテナンスも家賃保証会社に頼まなければなりません。それらの費用を毎月固定で算出している場合はもっと深刻です。その算出は家賃保証の会社が損をしないような金額を設定しているからです。

大手ほど建築費が高いのはリスク回避のためしょうがない、とおっしゃる方に言いたい。家賃保証は本当にリスク回避になるのでしょうか。大手企業だから倒産リスクがないとは言えない時代です。そしてなによりも家賃保証はいつでも解約できるのです。保証してもらうために高い建築費を払っても、その保証がローン返済まで続くかわからない。これではリスクを回避していることにならないでしょう。

今まで何十とサブリースの見積りを見てきました。昔の手口は賃料を誤魔化して年々家賃が上がっていくように設定して、収益が良いように見せかけるものでした。賃貸収支は建物や設備の減価償却により通常は悪化していくものなのですが、そこでは何故か安定したシミュレーションとなっていたのです。

最近のものは家賃は一定なのですが、10年後には赤字に転落。しかもあまりにも悪い数字にならないように、大きな出費は全て月額徴収しているのです。早い話、大規模修繕など将来支払うべきお金を利益がある時に保証会社が搾り取る図式です。こういう場合の営業マンの口癖は、賃貸経営は相続対策です、しかもリスクは全て弊社が引き受けるのです。くれぐれも騙されることのないよう注意しましょう。

新築のサブリースはリクスが低い

サブリースでは、礼金、敷金、更新料も保証会社の収入になります。特に新築物件では礼金や敷金を高く設定でき、家賃も新築価格の高値で契約できる傾向があります。賃貸経営は新築時から数年が一番の稼ぎ時であり、家賃保証にとってはリスクが少なく高収益を出してくれる時期なのです。

そして年数が経つとだんだんと収益が悪化してきます。そうしたら家賃を減額、場合により解約すればリスクがほとんどなくなります。大家さんは将来のリスク回避のために保証契約を結んだつもりでも、保証会社はほとんどリクスなく利益だけを上げているのです。

サブリースの目的

本来、サブリース契約を結ぶということは安定した家賃収入が目的のはずです。当然賃貸収益は悪くなります。少ない家賃収益で物件を維持しようとしたら、建築費や入替工事代、毎月の清掃メンテナンスをできるだけ抑える必要があります。

毎月の経費を抑えようと思ったら、1社に丸投げでは絶対にダメです。工事は工事会社、清掃は清掃会社というふうにしなければなりません。サブリースする条件としては、少なくともその家賃保証会社が施工会社と異なる会社、または同グループ会社でないかをチェックすべきなのです。

不動産会社1社に任せる場合でも、きちんと相見積りをしているか、発注会社は全てバラけているのか、そしてそれが適正価格かどうかを見定めることが大切です。サブリースはおすすめしませんが、このようにすることで利益確保をすることができ、物件を手放す可能性が低くなります。

そしてサブリース契約は永遠に続くものではないことを理解しましょう。保証会社はいつでも解約することができるのです。解約となれば大家さんが各入居者の貸主になります。いわゆる地位継承です。その時にこんなはずではなかったとならないために、サブリース契約する場合には次のことに注意しましょう。

保証会社が各テナントと契約する時に条件をつけもらうようにしましょう。例えば、敷金は1ヶ月分は預かる、保証人または保証会社を必ず付ける、ペット可否・楽器可否・外国籍可否などは予め取り決めしましょう。逆に言うとこれらをいい加減に行う会社も多いのです。

賃貸経営で大変なのは20年後、30年後の運営です。ローンの支払いがあるため、それまでになるべく家賃を下げないように、そしてメンテナンスをしっかりやって建物を綺麗に維持することが大切です。

家賃保証会社はそんな先まで気にかけて運営はしていません。毎月の利益が一番、建物が老朽化したら大家さんに負担してもらうか解約すればいいと気楽に考えているのです。

新築時から一番良い時期、儲けも出る時に家賃保証というリスクが全くないと思い込んでしまい、あとあと苦労することになるのです。苦労だけですめばよいが売却してしまう大家さんがあとをたちません。実際に保証会社の説明不足と訴訟にいたるケースもたくさん出てきています。

大家さんは減額請求をどこまで飲み続けるのか、保証会社はもう絞り取るところがないからと保証を打ち切るのか。そのような事態に陥らないために理解しておきましょう。

次はサブリースの落とし穴

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